世の中には危険が一杯あります。この数多くある危険がいつも降り掛かってくるわけでもありません。それには自覚してまたは知らない間に、事前回避された、危険から遠ざかっていたとか、危険が事故として発生しなかったなどがあるからです。
日常生活でも、会社の仕事でも、毎日行うことが当たり前の行為があります。
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今日も買い物に行きます。団地の高層棟のエレベータで降りて、車を運転して、スーパーの駐車場に駐車します。エスカレーターで3階まで上がりました。買い物を済ませ何事も無く家まで戻りました。
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この中にどんな危険があると言うのでしょう。
まず、あなたはエレベータに乗りました。無事1階まで行けたのです。
最近のエレベータ事故をご存知ですね。
車を運転しました。駐車しました。
四つ角で出会い頭にぶつかる事も無く、着いたのですね。
駐車場の壁を突き破って落ちた車があります。無事駐車できましたね。
エスカレータに何事も無く乗って、買い物もできました。
エスカレータで履物が引き込まれて足の指を切断したという事故がありましたね。
そして何事も無く、家に帰りました。
さて、通常はこのような危険は考えていません。なぜかといえば、通常の注意深さで行動すれば、殆どの危険は避けられているからです。
危険が存在していないということではありません。
エスカレータに乗るときはあまり意識しなくても、黄色の注意ゾーンは踏まないように乗ります。でも、考え事をしていた、何となく後ろからせっつかれた、急ぐ気があって前の方に立ってしまった、という状況があると足の指が切断される事態になるまで気が付かないのです。
この場合、不注意で事故を起した人が悪いのか、足の先が入るくらいにエスカレータに損傷があったのを見落とした人が悪いのでしょうか。新聞報道では、エスカレータの管理者の管理不行き届きとなります。
ここで、危険管理ということを考えましょう。
危険管理とは、発生しうる危険を無くす、避ける、それに遭遇しても最小限の被害に止めるなどの手段を考えて行くことです。そのためには「危険という現象」を理論的に分析し、その要素、要因を具体的に理解する必要があります。
さて、もし危険な要因が分かり予測できたとします。その時、危険管理では、まずその危険を起す環境を改善することを考えます。なぜかというと、危険につながる行動そのものは、それを行うことに必然性があるので、止められないからです。
買い物をしない、会社に行かない、会社の業務は遂行しない、というなら、それらにまつわる危険の要因は排除できるでしょう。
それでいいですか?
無理ですね。日常生活の拒否、生活の糧も稼がないとなれば、よほど恵まれている人でなければ、究極の危険に見舞われます。つまり、生命の存続の危険です。
危険管理は、数々の危険を熟知している専門家しかできないと考えていませんか?
もしそうであれば、世の中の無数にある危険を管理しようとすれば、無数の専門家が必要になります。
専門家なら、その行動、行為を見れば危険がわかるでしょうか?
もしその行動、行為がその専門家のよく知っている分野ならそうでしょう。
飛行機のパイロットの行為を見て危険が正確に予測できるのは、同様な危険を経験した人と言うのですね。もしそれが墜落事故だったら、そんな経験者は多分死んでいるので、なかなか見つからないでしょう。
そこで、経験はしなくても、考える方法を熟知していれば、そして、類似の分野での、類似した経験の持ち主が好ましいのですが、そうでなくても考えることのできる人ならできる方法があるのです。
危険なことはよくないという感情論ではなく、冷静に分析する方法を訓練されたされた人「危険管理士」の出した結果から導かれた結論なら殆どの人が納得できるでしょう。
この危険管理士は危険をどのように考えるのでしょうか。
① 当然行うべき行為をしないで済むようにするか、
② 当然の行為を危険に変えてしまう環境を無くすのか、
③ 危険となってしまっても被害を最小限に留めるか、
というように考えます。
この考え方を3層構造と呼ぶことにしました。ペリル、ハザード、リスクという言葉を3段階の連鎖とする考え方が英国のリスクマネジメントの手法として紹介されています。
しかし、日本人にはペリル、ハザード、リスクという言葉の持つ意味の違いが分かりません。どの言葉も翻訳すれば、「危険」となります。
①の行為は要するに人間の全ての行為ですし、危険など全く無い行為も入っています。
②は①を危険に導く環境や状況を言っていますが、それ自身が危険なものである必要はありません。たとえば、氷が張っていること自身は単なる自然現象です。
③に至って、おやこれは危険じゃないか、と言える項目となります。
このような考えをうまく言い表すものが無いために、多少堅苦しいですが、第1層、第2層、第3層、と呼ぶようにしました。
また、危険はそんな単純なものでないことが多いので、第3層のことが次の段階の第1層になっている形を取ります。多段階の分析とすることで、単純な第1,2,3の3層分析の積み重ねで、重大な危険(事故)でも分析できます。
すでに、中華航空機の火災事故はボルトの設計が原因とか、宝塚で起きたカラオケ店の火災事故では、消防法の規定を守らないことが死亡事故に発展した理由などこの3層分析手法を用いて解明しました。同様に、大きな労災事故でも客観的な事故原因の指摘ができました。
車の運転では、多少の速度超過があってブレーキをかけること(第1層)は、それだけでは危険とはならないが、もしそこの道路が凍っていて、(第2層)、スリップを起こす(第3層)。さらに次の段階では、スリップを起こす(第3層)は次の第1層となり、その時ハンドル操作を誤れば(第2層)、道路から飛び出す(第3層)。という連鎖が予想できます。それではどう危険を避けるかとなれば、1.速度は超過しない、2.道路を凍らせない、
3.スリップしたらハンドル操作をしない、または、任意保険に加入しておく
などを考えます。
以上でお分かりと思いますが、危険管理士会では、危険ということをこのように理論的に分析し、対策を立てる方法を研究し実践することを目指しています。また、このようなことのできる人を認定し、危険管理士の称号を与えて、世の中のお役に立とうと考えて活動している会ということです。